全国部ブラックバス防除市民ネットワーク




ブラックバス
ブラックバスとは?
スズキ目サンフィッシュ科オオクチバス属は、北アメリカ原産の温帯性の魚食性淡水魚です(写真)。最新の研究によると、オオクチバス属には9種が含まれています。これら9種の総称として、「ブラックバス」の呼び名が使われています。現在、日本に分布するブラックバスはオオクチバスMicropterus salmoidesとコクチバスM. dolomieuの2種ですが、一部の水域でオオクチバスとフロリダバスの雑種も確認されています。



オオクチバス Micropterus salmoides  写真提供:(財)自然環境研究センター



コクチバス M. dolomieu       写真提供:(財)自然環境研究センター
導入経緯と分布拡大
日本への導入は1925年に芦ノ湖にオオクチバスMicropterus salmoidesとコクチバスM. dolomieu が放流されたのが最初とされています。ルアー釣りの対象として利用するためです。これらの2種は、近年になって急速に分布を拡大し、現在では、全国各地の湖沼やため池、河川などで生息するようになっています。なお、同じように、サンフィッシュ科に属するブルーギルLepomis macrochirusも、1960年に導入されて、今では全国各地の水域で定着が確認されています。
分布拡大の理由
日本でこんなにもブラックバス(オオクチバス,コクチバス)が広がったのには、おもに二つの理由があります。一つ目の理由は、人によって各地の水域へと放流されたことです。魚は同一の水域内を自由に泳ぎまわることはできても、鳥みたいに空を飛んで水系間を移動することはできません。ですから、各地で確認されているブラックバスの水系を越えた分布拡大には、必ず人が関わっているはずです。二つ目の理由は、ブラックバス自体がもっている生物学的特性です。ブラックバスは、湖沼やため池、河川などの多様な環境に適応して生息できますし、北アメリカ原産なので冬の低水温に耐性があります。また、成魚は魚類・甲殻類食性ですが、生息環境に応じて柔軟に食性を変化させます。さらに、産卵数が比較的多く、かつ、雄親が卵・仔魚を保護する習性があるので、少数個体の放流で定着・増殖できます。そして、在来魚と比べて成長が早く2年目で約20cmに達します。このような侵略的な生物学的特性は、ブラックバスが各地の水域に定着するうえで役立ったものと考えられています。もちろん、これらの二つの理由のうち、どちらか一方でも欠ければ、これほどのブラックバスの分布拡大は起こらなかったものと推測されます。
在来生物群集への影響
ブラックバスは世界各地に導入されており、少なくとも80カ国以上で導入の記録があります。海外の研究者は、ブラックバスが定着して、生息密度が高くなった場合に、捕食や競争・駆逐などにより在来生物群集に甚大な影響を及ぼすことを報告しています。
同じように、日本各地の水域でも、ブラックバスが在来生物群集にさまざまな悪影響を及ぼしているおそれが指摘されています。例えば、京都府深泥池ではブラックバスの侵入後に在来魚の種数や個体数が減少し、在来生物相に変化が生じています。宮城県鹿島台のため池では、ブラックバスが侵入したあとに、絶滅危惧種のシナイモツゴが確認できなくなっています。また、秋田県のため池ではブラックバスが個体数や重量で優占し、いくつかの在来魚種の生息が確認できなくなっています。ラムサール条約登録湿地の宮城県伊豆沼・内沼では、ブラックバスの侵入・定着後に、希少なゼニタナゴやメダカ、ジュズカケハゼが急減し、いくつかの魚種では全長分布が大型個体に偏るなど、著しい魚類群集構造の変化が確認されています。このような魚類への影響だけではなく、捕食による甲殻類や昆虫類への影響も懸念されています。
さらに、ごく最近の研究では,ブラックバスの強い捕食圧によって生物群集がさまざまな間接的な影響を受けていることが実証されています。この他、ブラックバスの捕食により水産業被害が起きていると考えられる水域も多くみられますし、ブラックバスが多く生息する湖沼では多数混獲されることにより操業に著しい支障をきたしています。



 ※全国ブラックバス防除市民ネットワークは(公財)経団連自然保護基金の助成を受けています



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